2008年03月19日(水)
がい骨のできもの [成院長からの一言]
人類が外科手術を手がけたのは、中世末のヨーロッパの絵画史料からみることが出来ます。
12世紀、イタリアのボローニャに最初の大学が誕生し、そこでモンディーノが世界最初の人体解剖の講義をしたそうです。
モンディーノ教授は教壇に座り、実際に解剖をしていたのは身分の低い人物であることが、絵画から伺えます。
こうして、今まで病気は外からだけ診ていたものが、人体の内部、つまり臓器に病気の原因があることを知ることができるようになり、近代医学が誕生したと言われています。
15世紀には、すでにメスなどの器具を使った外科手術が行われていたことが描かれており、またもイタリアでは、足の切断手術や鼻の形成手術が一部の医師によって行われていたことも、当時の絵画史料からうかがえます。
しかし、当時アヘンなどの麻薬を使う方法以外に麻酔方法がなく、外科的手術は想像を絶する激痛を伴い、消毒法もなかったため、極めて危険の高いものでありました。
19世紀になってやっと近代的な麻酔法が使われ、また消毒法もその後発見され、外科手術に大きな貢献をしてきた輸血も加わり徐々に現代のような手術の形態が確立されて行きました。
そこからほんの数世紀たったつい先日、その恩恵を受けて頭蓋骨の骨腫瘍(外骨種)の摘出手術を当院で行いました。
骨を除去するため、ノミ、槌(ツチ)、ドリルやヤスリなどを準備して当日は手術を行いました。額の生え際に存在した腫瘍は、「ツノがあるの?」とよく他の人に言われていたとのこと。
局所麻酔の手術であったので、術中も患者様とお話をしながら、ちょっと頭を支えるように助手を誘導しながら、ノミとツチで“カンカン、カンカン”と大工さんのように手術を行って行きました。
近代的な麻酔を受けている患者様は、「骨に響きます」と・・・。手術中に訴えていました。
腫瘍を摘出後、頭蓋骨のおでこの部分の表面をなだらかにしたのち、骨膜、筋肉層、皮下(真皮層)を縫合して手術を終えました。
中世の医師も同じ気持ちで手術をしたのかなぁ・・・。
Posted by 管理者 at 14時50分
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