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2009年06月19日(金)

―連載最終回 万歳!世界自然遺産に登録!

自然遺産に押し上げる提言をしようと決断したのは、当時ムルに来られる欧州からのゲストと名刺交換をしたとき、製薬会社の人が多く、彼らからこの森の価値を教えてもらったのがきっかけでした。

自然遺産の決定的決め手となったのは、この山全体にあります。

ひとつはジャイアントケーブという力学的には崩壊しておかしくないほどの巨大な洞窟があります。そして動植物の生態系に大変な研究価値があります。実際にミリ市にあるランビルという村には、日本の大学が3学だったか4学だったかが協力しあい、生物学の権威的な教授と学生さんたちが珍しい動植物の研究を続けておられます。癌のお薬やHIVのお薬のもととなる成分は、このジャングルから発見されているそうでよ。

お花好きには、断崖絶壁に自生するランが有名です。見つけることができれば、とても幸運なほど、レアなランです。持ち出しは禁じられていますが、闇では当時25万円ほどで取引されていました。

先述のジャイアントケーブは、ジャングルを2日かけて行軍しなければならないので、観光用には公開されていませんが、観光用の4つの洞窟だけでも十分に魅力的です。

遊歩道も整備され、ジャングルトレックを気軽に楽しんでもらえますよ。

ただ、非公開のケーブも国立公園に申し出て、レンジャーを雇えば、冒険にでることは可能です。

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ジャングルを歩いているといろんな昆虫や動物、植物に出会います。但し、ラフレシアはここでは見られず、サラワク州の別の国立公園か、サバ州で見ることができます。
でも、蟻と植物の共生のようすとか、One Leaf Plantという1本に一枚の葉しかつけない珍しい種類の植物など、退屈せずに散策できます。
この花はとても咲き方も姿も、可憐です。

上の写真は、アジア最大級の蝶です。色もきれいですが、おどろくほど高速で飛びます。つばめが滑空するようにスマートに飛び、とても優雅です。




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右は、昆虫好きにはたまらない、3本角のカブトムシで、ジャングルの中よりも、水を求めてホテルのプールサイドに勝手に集まってくるので、簡単に出会えます。

私が見た最大のものは大人の男性の握り拳大。

手にとろうとしたら、力が強くて、ウッドデッキから、はがしとることさえできませんでした。



さあ、いよいよ洞窟です。

観光用洞窟は Show Caves と呼ばれ、大きさと、こうもりの飛翔で有名なディアケーブ、数億年かけて、かつまだ進行中の鍾乳洞が美しいラングケーブ、ジャングルの水の循環システムに研究価値のあるクリアウオーターケーブ、風穴となり、独特の鍾乳形態のウインドケーブの四つです。

これまた際限なく話題に事欠きませんから、今回は2つだけご紹介します。

ひとつは欧州の大聖堂が4つは入るとされている巨大なディアケーブです。実は昼間はこの中にこうもりが300万匹、眠っています。その中を歩いて巡ります。中には小川が流れており、こうもりの落とす糞から出る栄養素と塩分がその清水にしみだし、それを野生の鹿の大群が飲みにきていたことからディアケーブと名付けられています。

ちなみに目のない透明なエビが生息し、もとは深海であったことを物語ります。

このこうもりたちですが、午後5時くらいになると、ファミリー毎にジャングルへ捕食に飛び立ちます。これをドラゴンフライと呼び、観光の目玉となっています。

小さな展望広場にはこのドラゴンフライを見るために集まった世界中の人達でいっぱいとなり、肩ふれあう広さなので、国籍を超えて和気あいあいの歓声がとても楽しい。



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これがディアケーブです。

中から入口を振り返ると、アメリカの歴代大統領でも歴史的にもっとも有名な方の顔が見えます。

さて誰でしょうか。下がそれです。

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下の2つが、ドラゴンフライ。

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洞窟の入口にファミリー毎に円を描くように飛びながら集まり、全員そろったら、ファミリー毎に龍のようにつらなって、主に蚊を食べに行きます。すべてのファミリーが飛び出すまで、約1時間かかります。

蚊を一晩で、10tも食べますから、ジャングルの中ではうまく生態系が守られていて、意外に私たちは、蚊にはくわれません。



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次にご紹介するのは、ラングケーブ。

4つの中ではもっとも小さなケーブですが、太古の昔から1mmずつを積み重ねた鍾乳石は、言葉では表現できない美しい自然の応接間を作っています。また小つばめも生息し、天井に水流が石でこすりあけた小さな穴で眠る姿が愛らしいですよ。

とこんな具合に、遊歩道とリバーボートで4つのケーブを回り、夜6時過ぎくらいに帰路につきます。

途中、もう日本では見られなくなったホタルたちがとびまわり、日本のものとは違うカエルやこうろぎの不思議な声を聞きながら、漆黒の闇の中、懐中電灯の明かりを頼りに、国立公園の入口へ戻ります。六時きっかりに鳴くカエルがいて、ジャングルの時報、母の鐘。

いい汗をかいたあと、国立公園入り口の茶店でビールをいっぱい、、、たまりません。

ホテルに戻れば、おいしい料理、特に野菜やバナナなどは、ジャングルに自生しているものをシェフたちが収穫に出かけますので、ほんとうにオーガニックな野菜炒めが味わえますよ。

変わり種に挑戦したければ、チカダのから揚げなどいかがでしょう。

チカダは、せみで、その子供を、羽をとって、さっと揚げます。

メニューにはありませんので、ホテルの従業員にあらかじめ頼んでおいてくださいね。味は、目をつむって食べれば、えびです。挑戦したい人はいないと思いますが、、。

エピソードA :地元の集落はロングハウスという、世帯が増える毎に横に建て増しをしていく、大家族集落です。ほとんどがクリスチャンで、従業員もこの集落群から雇っていますので、クリスマスには贈り物をもって訪問します。族長さんは客人をもてなすときは自ら吹き矢と槍をもってジャングルに入り、いわゆる野豚を狩りにでかけます。このワイン煮込みがうまいんです。お酒もトワという米の酒を作ります。日本人にはなんとなくなじみある料理の数々が並びます。ただ病人以外の男性は、ぶったれるまで、1世帯訪問毎に酒を飲まされますので、心して訪問してくださいね。もっとも巨大な集落は80世帯でしたぁ!!!

ホテル内には、崖登りの施設や、自転車やつりざおの貸し出しなど、アクティヴィティもいっぱいです。プールも小さいですが、ジャングルの中のプールは不思議感いっぱいです。

ハミングバードや、運がよければ州の象徴である、大きな鳥、ホーンビル(サイ鳥)が見られるかも。

必ずツガイで飛ぶこの鳥を見つけることができれば、幸せになれると言われます。

私はジャングルの新しいルート探索にでかけたとき、道中30分間、私たちの上で旋回しながら、5ツガイで飛ぶ10羽のホーンビルに会いました。人間が珍しかったんでしょう。

一度にたくさんのホーンビルに会いすぎたのでしょうか、あまり幸福感を覚えたことはありません。(笑) (下の写真がホーンビルです。大きいですよ。羽広げたら約1m。)

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この3年間で、私の人生観は変わりました。

家族・一族一丸となって生活すること。

物質より時間と空気が大切なこと。

鳥の声で目を覚まし、夜の帳とともに眠ること。

まさに動物としての人間の、本来の生活を楽しんだ3年間でした。

因みにここの川で泳いでいると、できものなどはきれいに消えてなくなります。

日本に帰ると、同じところに同じものができたのには驚きました。

端折ったツアーでしたが、皆さんの旅情を、少しはかきたてることができたでしょうか?

もう一度、それぞれのホテルのHPアドレスです。話しても話しきれないので、興味のある方はどうぞ。

ミリの海辺のホテル:

http://www.marriott.com/hotels/travel/myymc-miri-marriott-resort-and-spa/
ムルのジャングルのホテル:

http://www.royalmuluresort.com/home.htm



今はマリオットホテルグループと地元資本のホテルになっています。さみしい限りです。

私がホテルを辞めたのも、これが大きな理由のひとつです。

もっと話を聞いてみたい人、クリニックへ遊びに来てください。

エンドレスストーリー、お話します。

自慢ではないですが、世界遺産登録を提言したのも、今の飛行場拡張を提案し、地元州政府を動かしたのも、当時の私と私のクルーでした。世界遺産登録決定を聞いた直後、日本に戻ってきました。

帰国直前、地元の有力紙には、「Mr. Sakamoto Leaving」とタイトルされた記事が新聞1ページ扱いで掲載されました。思い出を閉じ込めるため、その新聞は持ち帰りませんでしたが、あの町とあの村の人々の繁栄を、今も心から祈っています。



データ:

所在地    マレーシア国、東マレーシアボルネオ島・サラワク州

民族構成   イバン族(土着民)40%、華人40%、マレー族4%、その他を土着の少数

       民族数種で構成。

       本島西マレーシアとはまったく異なる文化を有しています。

州都     クチン

産業     天然ガス、石油、木材、やし加工品原料

食べ物    マレーと中華がミックスされた現地料理はさほど辛くなく、全般的に日本人の口に合います。

はっきりいって、おいしいです。

私の好物   ジャングル自生のバナナ、サラワクラクサ、フィッシュヘッドカレー、

       コロミー、ビーフレンダン、アイスカチャン、チャンコマニスという繊維豊富そうな野菜の卵炒め。

*ラクサやフィッシュヘッドカレーは、シンガポールが有名ですが、まったく品質が違います。

こちらの方が、あっさりとしかししっかりと味があり、断然うまいです。

コロミーは、東京あたりで一時流行った汁なしの「油そば」です。

が、麺は細く、たれがしっかりとからみ、あっさりとして信じられないほどおいしいです。
これはサラワク州にしかなく、一番有名なのは、州都クチンのそれです。
ちなみにクチンは、第二次大戦中、4年間、日本の統治下となりました。

シンガポールと同じで、資料館には、「未来に向かって手を携えよう!

でも過去は忘れるな」という、実に心を痛めるが、考えさせられる碑文があります。


 

 

 

Posted by 管理者 at 15時38分

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