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2011年04月22日(金)

原子力事故の実態(7):永田町異聞メルマガ [クリニックにて]

       
永田町異聞メルマガ版
     
      「国家権力&メディア一刀両断」 2011.04.21号

                         
                  新 恭(あらた きょう)



        隠された原子力利権の構造 


悪評高かった計画停電の騒動は一段落したものの、東京電力は、空調などで需
要ピークとなる夏の電力が足りないと、さかんに不安の太鼓を打ち鳴らす。

あるジャーナリストがこんなことを言っていた。

「原発が無くなったら大変なことになる、という脅しに決まっているよ」。

首謀者は、東電と政府、とりわけ経産省ということになろうか。とにかく、原
発推進路線は変えたくないのだろう。

たしかに、東電の発電施設の数、規模ならびに、その設備の稼働率の低さを考
えると、休止している火力発電所を動かせば電力くらい、いくらでもつくれる
だろうという気がする。

稼働率が低いということは、発電を休まなくては電力が余って困ることを意味
する。東電のみならず、この国の電力会社はそもそも供給能力が過剰状態であ
るはずなのだ。

資源エネルギー庁の昨年3月の数字によると、東京電力の「発電設備利用率」
は水力89.5%、原子力58.0%で、火力となると48.6%に過ぎない。運転を休止
している火力発電所がいかに多いかということだ。

関西電力などは原子力60.6に対し、火力は34.4%しか動いていない。

それだけ、日本のエネルギー政策が石油、石炭、LNGを使う火力発電から、
原子力発電重視にシフトし、その分、遊休火力発電所が増えていく構造になっ
ているといえる。

09年度の発電構成をみると、原子力がすでに29.2%にもおよんでいる。あと
はLNG29.4、石炭24.7、水力8.1、石油7.6%だ。

東電は4月15日、以下のような発表をした。

「今夏の供給力が、最大電力5,500万kWを大幅に下回る4,650万kW程度とお知
らせしておりました。その後、火力発電所を中心とした震災による停止からの
復旧、長期計画停止火力の運転再開および定期点検からの復帰など、供給力確
保の対策に全力で取り組んでまいりましたが、新たにガスタービンの設置など
により、さらなる供給力の増加に見通しがついたことから、現時点での今夏の
供給力を、5,070万kW〜5,200万kW程度へと上方修正いたします」

今後もさらなる上方修正はあるだろう。運転再開できる火力発電所がまだある
はずだ。ほぼ5,500万kWの確保に見通しがついたということではないだろうか。

むしろはじめから、その見込みがあったと考えたほうがいい。

つまり、福島第一原発がなくても、電力は賄えるということだ。しかしそれを
正直に言うと、原発の存在価値が低下する。計画停電、首都圏大停電の脅しは、
経産省と東電の出来レースといえる。

国策とはいえ東電をはじめとする電力会社は、なぜ原発という、危険でしかも
地元住民との交渉に苦労する施設をつくってきたのだろうか。

企業は、利潤の大きい事業を選ぶ。火力、水力よりうまみがあるから原子力を
選ぶのである。

自民党政権時代に政府が仕組んだ、あるいは容認した、二つの「利権」につい
て語らねばならない。

電力会社は、原発という厄介な発電方式の推進の見返りに、発送電一体による
地域独占と、総括原価方式という、おいしい電気料金制度を、政府に与えられ
ている。

だからこそ、高収益体質を維持し、社員の高待遇と定年以降も続く身分保障を
実現できている。そして、蜜月関係にある経産省から天下り官僚を受け入れて
いるのである。

今年1月に資源エネルギー庁長官から東電の顧問に天下った石田徹はいずれ副
社長の座が約束されていたが、原発事故をきっかけに天下りへの風当たりが強
まったため4月末で退任することになった。

さてそれでは、東電などの電力会社が原子力発電所をつくることでどのように
儲かる仕組みになっているかを説明したい。

まず、総括原価方式とはなんだろうか。これは、電力会社を経営するのに必要
なすべての費用や設備、資本をレートベースとし、それに一定の報酬(利益)
率分をかけて上乗せした金額が販売収入となるよう、電気料金を決めるやりか
たで、どんな無能な経営者であろうと絶対に赤字にならないシステムだ。

レートベースのなかに「核燃料所有額」が含まれていることに注意が必要だ。

同じ発電所をつくるのなら、所有している燃料の額までも電気料金の算定ベー
スに組み入れてくれるのだから、原発を選んだほうが火力より数段、メリット
が大きい。

もう一つの大きな利権である「発送電一体」は、文字通り、あるテリトリーに
おける発電と送電を一つの会社が一手に引き受けることであり、これが電力会
社の地域独占につながり、新規参入を阻むもととなっている。

たとえば東電はその営業区域内に自らの送電網をめぐらせているが、その送電
網を使って他の電力会社との間で電気のやりとりができるような十分な容量を
確保する仕組みにしていない。

このため、今回のような震災で電力不足が起きた時に、たとえば関西電力や中
部電力から電気を東電区域内にまわしてもらうようなことができないのだ。

少なくとも送電網は、国など公的機関が全国にはりめぐらせ、どの会社の発電
所からも電気が通せるよう、発電と送電を分離しておくべきである。そうすれ
ば、各家庭は電力会社を選ぶことができ、電力会社間にも競争原理が働いて、
電気料金が安く抑えられるだろう。

本来の公益を考えるなら、国はそうあるべきだったが、それをしなかった。な
ぜだろうか。原爆を二度も落とされ、核の悲惨さを体験した唯一の国、しかも
大地震が同じ地域で繰り返し起きてきた歴史をもつこの国で、なぜ政治は、行
政は、原子力という選択をしたのだろうか。

ここからは、どうしても中曽根康弘という個性的な政治家に言及せねばならな
い。

中曽根は内務省を依願退職し1947年、衆議院議員に初当選。1953年、かつての
マッカーサー司令部の対敵諜報部隊員、コールトンに勧められて、ハーバード
大学の夏期セミナーに留学したさい、政治学部の助教授だったキッシンジャー
と出会った。

米国のアイゼンハワー大統領が、それまで軍事機密だった原子力の平和利用推
進について声明を出したのも、同じ1953年の12月だ。

そして中曽根は翌54年、一議員でありながら原子力研究のための2億6000万円
の予算案を国会に上程し、成立させた。2か月におよぶ夏期セミナー期間中に、
原子力について何らかの刺激を受けたのだろう。

当時、被爆国日本では、学者の間で原子力研究をすべきかどうか賛否がぶつか
り、堂々巡りとなっていた。むりやり研究予算をつけることでそんな空気を打
ち破りたい意図が中曽根にあったといわれる。

中曽根は正力松太郎に原発のメリット、将来性を吹き込み、すっかりその気に
させてしまった。正力は初代原子力委員会委員長におさまって、英国製原子炉
(1966年運転開始)の導入に動き始めた。

原子力発電所の実用化については英国が先行し、すぐに米国があとを追う形と
なり、やがてGEやウエスティングハウスが開発した「軽水炉」により米国の
独壇場となる。

「原子力村」という言葉がマスコミでよく使われる。経産省資源エネルギー庁、
原子力安全委員会、原子力安全・保安院、東電など電力会社、東芝、日立など
の原発メーカー、東大原子力工学科を中心とする原子力学界…そうした共同体
をさすのだろう。

官僚、電力会社、原子炉メーカー、学者らの利権ネットワークといえる。

「原子力村」のそもそもの出発点に向けて遡ると、米国シカゴの近郊、アルゴ
ンヌという地名に行き当たる。

アルゴンヌには米国の原子力研究所があり、その近くに世界の若手エンジニア
を原子力技術者に育てる研修所が併設されていた。

そこに、通産省工業技術院の官僚や、東大の研究者、誕生したばかりの東電原
子力発電課の社員、東芝の技術者らが参集し、技術を学んだ。

彼らは、原発の黎明期における日本で、「バスに乗り遅れるな」と、「プロジ
ェクトX」のような協力関係をつくり、日本の原発を推進する原動力となった。

この流れをくむ産官学連合体が、マスコミへの広告出稿、情報提供、レクチ
ャーなどを通じて原発安全神話を国民に吹聴し、信じ込ませた。

今回の福島第一原発の状況についても、専門家としてテレビに登場する原子力
学会のメンバーが、希望的観測をまるで事実のよう思い描き、楽観的な説明を
繰り返してきたため、多くの国民が実態を把握できないまま戸惑っている。

原発神話といえば、原子力のほうが火力より安いというウソがある。これも
彼ら「原子力村」の住民がPRによって信じ込ませたものである。

その根拠は、昨年9月、原子力委員会に提出された大島堅一立命館大教授の資
料からみてとれる。

それによると、1キロワットアワーについての発電費用(単価)は原子力8.64
円、火力9.80円、水力7.08円で、これだけ見ると、原子力は水力よりやや高く、
火力より1円以上安いかのごとく見えるが、ここには巧妙なカラクリがある。

実はこの「水力」の中には、われわれがイメージする一般的な水力発電とは別
に「揚水発電」が含まれている。

揚水発電は主に、原子力発電の夜間余剰電力を使う調整用で、夜間に水を汲み
上げ、需要の多い時間帯に落として発電する。つまりは、「水力」に含めるより、
実質的には「原子力発電」にともなうものと考えるべき発電だ。

そこで、水力を「一般水力」と「揚水」に分け、「揚水」を「原子力」にプラ
スしてみるとどうだろうか。

「一般水力」3.88円、「揚水」51.87円、「原子力+揚水」10.13円である。

つまるところ、原子力とそれに付随する揚水の発電費用は合わせて10円をこえ
るのに対し、一般的な水力発電は3.88円で済み、火力発電でも「原子力+揚
水」よりはかなり安くつく計算になる。

しかも、 電力料金に含まれる電源開発促進税を主な財源とするエネルギー対
策特別会計や一般会計から支出される財政費用は、原子力発電にともなう地元
対策費、自治体への交付金、技術開発などに大半が注ぎ込まれており、それを
含めると、原発は他の発電よりはるかに高コストなのである。

今回の福島第一原発の事故で原子力の安全神話は崩壊し、安い電気という洗脳
状態からもわれわれは完全に脱却した。

ウランが無限にあるかのごとき幻想を抱いている人がいるかもしれないが、石
油や天然ガスや石炭と同様、いずれは枯渇する資源である。原発が世界各地に
広がるほどウランの枯渇は早まる。

無限のエネルギーは、太陽や風や水といった大自然であろう。これらをいかに
利用するかが、人類が地球上で生存しつづけるための前提条件に違いない。

今後、原発事業は、使用済み核燃料の再処理、放射性廃棄物の処分、管理、貯
蔵などに膨大な資金を投じ続けねばならない。現在すでにその一部は電力料金
に算入されているが、今後、さらに算入対象となる費用は加わっていくだろう。

こんな危険で不経済な発電方式をいつまでも続けることに合理性はない。既存
の火力や水力発電所でしばらくは、電力需要を賄えるはずだ。一刻も早く原発
シフトを転換し、本気になって自然エネルギー活用の方向に国策を転じるべき
であろう。


国家権力&メディア一刀両断
発行システム:『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/



Posted by 管理者 at 14時47分

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