2007年07月10日(火)
勘違いは後を絶ちません・・・ [美容医療界]
数日前に、当院に3年以上通院しておられるかかりつけの患者さんが久しぶりに来院されました。
一目で「二重瞼が左右いびつ」「下眼瞼に凸凹」・・・。
新聞広告が入っていた某クリニックに友人の付き添でいったところ、自分にも手術を勧められて、あれよあれよというまに・・・その気にさせられ、結果が上記のごとくで、
「○○さんどうしたの?その二重と下眼瞼・・・」
「物腰のやさしい担当医に”二重くっきりさせませんか””目袋つくったらキレイですよ”と上手い口車に乗せられて・・・埋没法もヒアルロン酸も理解しているつもりだったけど、こんなになってしまいました。何とかして下さい・・・・」
「そんなのクレーム言いに行ったら?」
「いいんです、私が軽率だった、自分の責任ですから・・・」
「自己責任?・・・こうして酷い美容外科医がはびこるんだよね・・・」
という具合です。
同じクリニックの術後相談を以前にも受けましたが、「酷くお粗末な手術」の一言に尽きます。他の同業のドクター曰く
「彼は腕よりも口でしょう」・・・
ところが自身は自分が上手いと思い込んでいるので始末におえません・・・
医療の手術はたとえ美容目的であろうが、命がけの手術であろうがパーフェクトは残念ながらありません。多くの先輩や同僚の厳しい目に鍛えられながら良い結果を出せるように研鑽していきます。
同じ手術をする医師の批判を真摯に受け続ける以外に上達はあり得ません。
今回の某クリニックは症例数何百・・・と誇らしげに広告していますが、
自画自賛で何例経験を重ねてももこんな酷い手術なら話にならないと思います。
「患者が満足しているから、それで良いだろう!」・・・ですか?
同じ場所で長くて1〜2年しか診療しない「ヤドカリドクター」に患者の満足や気持ちを語って欲しくありません。
当院も4年を経て、同じ患者さんの経過をずっと拝見させていただくことで、初めて研鑽できる部分があります。
僕の形成外科の恩師田嶋定夫先生は、
「手術は3回目までに満足行く結果が出せないなら、その手術は辞めた方が良い」
と指導して下さいました。もちろん外科医としての4〜5年の基礎訓練が終了していることが前提です。
「初めてでも75点以上の結果になるように、事前に関連文献などを十分に勉強すること」
1回目の手術の問題点を、他の先生から指摘していただき、十分に検討して
「2回目の手術では90点以上にすること」
さらに、自分なりの工夫を加えて
「3回目には限りなく100点に近づけること」
田嶋先生は、症例数を誇る外科医に対して
「そんなに沢山手術してこの程度の結果しか出せないなら、辞めた方が良いのでは・・・?」と常々おっしゃっていました。
症例数を誇り、自分が全く酷い手術をしていることを自覚せず、
「腕利きの美容外科医」と勘違いしたまま、堂々とゲストに手術を勧める。ゲストも勘違いして「つい軽い気持ちでプチ整形」を受ける。
勘違いの「なりすまし美容外科医」と「自称美容通の患者さん」は後を絶たないようです・・・
しかし、自分が望んだと思い込ませておいて、結果が悪くても「自己責任」と感じさせる「営業話術」。
クレームを言いに行っても、さらに丸め込み、追加の手術に導く・・・
ビジネスとしては「感服」いたします。
とても、敵いません・・・降参です。
憂鬱ですが・・・「上手くゲストを丸め込める術」など、持ち合わせようと思わない、ベンクリニックとしてはコツコツやっていくしかないですね・・・
Posted by 管理者 at 14時24分 パーマリンク
2007年05月07日(月)
プチ整形と駆け込み [美容医療界]
連休中はTVで美容系の番組が沢山放映されていましたね・・・
ダウンタイムが短い「プチ整形」や光学機器による治療が紹介されていました。視聴者の勘違いを起こすような内容もあり、戸惑いを覚えました。
正確な内容を伝えるのは難しい事だと思います・・・
しかし、「プチ整形」は今後も益々、一般化してくる予感ですね。
ベンクリニックでは「プチ整形」の多くを「インナーメイク」と位置づけています。特殊メイクと同じ考えですから、崩れることもありますし、何時かは効果がなくなります。ただ、医療技術を用いますので、効果が高く、持続性も長いというのが特徴ととらえています。
連休前から、他院のプチ整形術後の駆け込みが続きました。
あるクリニックで埋没重瞼をうけたものの固定点でラインができていないのでクレームをいいに行ったら、その場で小切開手術を追加された・・・しかし、やはりラインは全然違うところにできていました。無茶苦茶です・・・手術をされたクリニックをインターネットで調べると、重瞼の症例数の多さとオリジナルの理想的な手術方法を紹介してありましたが、いかにも自由自在に色々な手術をこなせるように書いてありますが、現実の実力とのギャップに閉口してしまいます。
これではWEBで検索する一般の人は、欺されざるをえない・・・
医療にマジックはありません。「正確な解剖を知っている」思いどおりに「切る」「縫合する」・・・修得するのに10年以上はかかります。
ベンクリニックのスタッフは形成外科医として「顔面外傷」を専門にしてきた経歴を持ちます。顔面のあらゆる部位の解剖を実際に断面や剥離面でインプットするトレーニングを積んでいます。また、先天異常の手術を通じて正常な解剖構造を再建するトレーニングをしています。症例が豊富な施設で10年以上形成外科をやってきて、なんとか一通りの基本的な手術トレーニングを受けた印象です。
別のクリニックで上眼瞼の脂肪除去手術を受けた方は「20分程度」といわれたが実際には「2時間」かかった・・・結果も術前と全く変わらず、何の改善もなかった・・・と受診されました。前医の切開部位を見ると、とても目的を達する事はできない位置を切開していました。20万円が水の泡です・・・
「ちょっと切って、わずかに脂肪を切除して、ハイ、何万円・・・」のビジネス優先クリニックで修行してきた結果だと想像します。
そこのクリニックのホームページは芸能人と対談を使っての「立派」な広告でした。一般の人には妖しいと感じさせる部分が見つかりません・・・共通しているのは、卒後に自分が選んだ専門科をドロップアウト、有名美容外科チェーンで数年だけ修行しただけで「患者様の立場に立った理想の美容医療」を行うと改心したと云っていること、そして形成外科のトレーニングを正式に受けていないことです。
修行中は「患者の立場に立っていなかった」とも言えます。人を欺くことに慣れてしまったのでしょうか・・・
医師として一人前になる前に、自由な世界に逃げ出し、常識ある医師の基準で評価されることもなく、「美容医療」という世間から隔絶された世界で、不正確な手術を重ねる・・・自分では一人前になったつもりで・・・結果は上記で紹介した2例のように「半人前」です。
大手美容外科で何千例・何万例手術をしてきても、不正確な手術では意味がありません。基礎がデタラメならその後の全てがデタラメになります。
皆様の大切な身体を任せる医師です。
どうか、まず医師になってからの経歴を十分にお調べ下さい。
「某美容クリニック」の部分も詳しくお尋ねください。
自分の五感全てを使って、担当医師の真実の力量を見据えてください。
美容外科は、もちろん医療です。形成外科の一部と認知されています。
医療ですから結果が担保されているわけではありません。不満足な結果で叱られることもあります。しかし、ある限度のレベルが必要ではないでしょうか・・・?
皆さんの目で「医療機関」として設備が十分に整っているクリニックをお選び下さい。
手術室がテナントビルの内装のまま・・・
ホコリまみれの外気が入る部屋・・・
心電図、酸素吸入器、吸引器、麻酔器・・・が見あたらない・・・
これでは、外科には不十分だと思います。
設備投資をしないからコストが安い・・・というのは詭弁だと思います。
トラブルで後悔しないように、皆様の一般的常識をはたらかせる事を切望します。
Posted by 管理者 at 12時10分 パーマリンク
2007年04月05日(木)
厚生労働省の「医師等資格確認検索」 [美容医療界]
尊敬している皮膚科のT先生のコラムに面白いリンク先があったのでご紹介しておきます。
厚生労働省の「医師等資格確認検索」です。
医師や歯科医師の資格を確認できるサイトです。卒業年度も分かります。
僕自身をチェックしてみました。歯科医師でも医師でも登録情報は正確でした。当然なんですが、なんだか、ホッとしました。
一般にある診療科の専門医を受検する資格を取得するだけで5〜6年必要です。医師の間でも少なくとも一つの診療科を5〜6年はトレーニングしないと「ものにならない」と考えられているからこそ、各科ともに、その年数のトレーニングが資格条件になっています。
僕は形成外科の基礎トレーニングのために、教授から科された「一般・外科研修」として救急医療と一般消化器外科を3年半修行しました。
1カ月に救急車による搬入が600件もあるハードな病院でした。
いわゆる「もうちょう」と呼ばれる虫垂炎の手術は200例以上執刀しました。胃切除や胆嚢摘出手術も数例執刀しました。しかし、自分のことを「消化器外科医」とは恥ずかしくて口が裂けても言えません。
このコラムの読者の皆様は、特殊技術が必要な職種で「一人前」と呼ばれるのにどれくらいのトレーニング(修行)が必要と考えられているでしょうか・・・
基礎のトレーニング無しで、いきなり本番を数年経験しただけでベテランと自称することが、「美容業界」では通用しています・・・
皆様の担当医師の卒業年度から、経歴内容のトレーニングに無理がないかチェックされてみるのも意味があると思います。
ベンクリニックは外科の基礎を十分にトレーニングした後、形成外科の専門医を取得した常勤医師が診療にあたっています。
少なくとも、考えたデザインの通りに切開して、考えたデザインのように縫合できるトレーニングは終えています。
皆様にMENAを御提供するために、新しいアイデアと仕上がりの上質を日々、研鑽しています。
Posted by 管理者 at 20時32分 パーマリンク
2007年04月03日(火)
わきが手術:本音トーク [美容医療界]
ワキガ(わきが・腋臭症)と多汗症の手術が多くなるシーズンになりました。
ベンクリニックでも連日、手術予約でいっぱいです。
健康保険で悩みが解消できる「皮弁法」は、直接アポクリン腺を見ながらハサミで切除しますので、再発はほとんどありません。
ここで、僕の「本音トーク」です。
僕自身は皮弁法を500例以上行っていますが、アポクリン腺組織は刃物で切除しないと絶対に除去できない組織だと思います。直接見ながら確実にハサミを入れても、簡単に切除できないほどしっかりと皮膚と一体化しています。皮弁を上手に飜転して端までしっかり剪除するには、50〜100例ほどの真剣な手術を経験する必要があることが、今まで後輩を指導してきた印象です。慣れない頃は両脇で2時間以上掛かることもあります。きちんと剪除するには、それなりの時間が必要です。
皮弁法でも傷の小ささを競うような広告を目にしますが、3cmは切開しないと端は見えません。手術に魔法の杖や手品はありませんので、皆様の良識を働かせることをお勧めします。
メディアに多数露出している「超音波法」で崩れるのはほとんどが脂肪組織です。超音波吸引法の再発を数例、皮弁法で手術しましたが、脂肪が吸引されているだけで、アポクリン腺はほとんどそのままという症例ばかりでした。よほど上手に操作しないと効果を出すのが難しい方法だと思います。
ローラー付きの器具で挟んで擦り取る方法も、僕には理解できません。
アポクリン腺が除去できるほど鋭利な刃物なら、はさんで擦るという操作で皮膚を相当傷めてしまうと想像します。ワキは複雑な立体的局面で構成されています。大きな平坦な器具で紡錐形の端が処置できることは理解できません。実際にこの方法の再発例を皮弁法で手術すると、皮膚のダメージによる拘縮が強く、剥離に難渋しますし、器具が入りにくい乳房側の端の取り残しが印象的です。
普通の脂肪吸引に準じた吸引法でも、術者が熱心に吸引すれば、効果が有ると思いますが、かなりの労力(術者は汗びっしょりになるはずです)が必要ですから実際にはそこまでされている先生は少ないと思います。
皮弁法をしっかり行うのが、効果の面ではベストです。
ただし、傷跡の問題が気になる人には、「クワドラカット法」を行っています。この方法は回転する刃物と吸引のハイブリッド機器を使用しますので、実際には刃物で切除しています。傷跡は5mm程度です。
ただし、クワドラカット法は上手く操作しないと、しっかりすればするほど皮膚が穴だらけになります。実際には「穴だらけ手術」しかできないので撤収されたドクターもおられると聞いたことがあります。反対に15分ほどしか時間を掛けない先生も多くおられるそうです。見学に来られた先生が、ベンクリニックの「クワドラカット法」があまりに丁寧で時間を掛けて行うことに驚かれたことがあります。
痛みに対しても、社会生活復帰に関しても「ベンクリニック品質」の手術を今後とも研究してまいります。
最後に、どのような手術方法でも、効果がでるだけしっかり行えば、皮膚は一度ダメージを受けて、「拘縮(縮む)」や「色素沈着」を起こします。
時間をかけて回復するものですから、しばらく我慢が必要になります。
術後の状態の事ばかりを気に掛けていると、思わぬ「甘い言葉で美容の落とし穴」に引き込まれかねないので、御注意下さい。
多汗症のボトックス治療には、中国製などの安い薬剤を使用されるクリニックが多いといわれています。当院ではコストはかかりますが、米国アラガン社のBOTOXを1回で80〜100単位(1バイアル全部)を使用しています。コストばかりに目を奪われると「ベンクリニック品質」は維持できないと考えています。
久しぶりの辛口「本音トーク」でした。
Posted by 管理者 at 18時13分 パーマリンク
2007年02月27日(火)
専門医について [美容医療界]
先日、他院でトラブルがあって当院に来院されたゲストの方から、僕のコラムで見かけた「専門医」について尋ねられました。
「マスコミや雑誌で評判が良いと書いてあったので受診したら、質問に対して専門的な説明がないまま、レーザー治療をされた・・・」とのことです。
あとで調べると、皮膚とは全く関係ない診療科出身の医師だったようです。
その後、僕のコラムで「専門医」という制度を知ったそうです。
マスコミや雑誌は「メディアとしての約束事」で成り立っています。
役者やタレントに素顔が別にあるように
必ずしも真実の姿が伝わるものではありません。
昨日、僕のコラムの中で記事ごとのアクセス数をチェックしたら、「標榜」「専門医」などの医師のキャリアに関するものが上位にありました。
美容医療界の危うい真実<シリーズ1・シリーズ2><医師のキャリア>
美容に関しては、まだまだ「イメージ優先商法」が通用している業界です。
皆様の大切なお体を任せる医師の経歴は是非きちんと調べていただきたいと思います。
専門医の一般知識については「日本専門医認定制機構」で、
皮膚領域関連科の専門医に関しては、各学会のホームページで検索できます。
形成外科学会専門医
皮膚科学会専門医
皮膚に関連する診療をするには、どちらかの専門医を取得していることが好ましいとする意見があります。規定のトレーニングを完了している専門医とそれ以外では、深刻なトラブルや合併症が起こった時の対処に差が出ることが考えられます。
美容外科については、同じ「日本美容外科学会」という名前の団体が2つあり混乱を招いています。それぞれが別々の活動をしているので、国からは正式に認可されていません。
形成外科専門医を正会員の条件としているJSAPS・正会員と
医師なら誰でも入会できるJSAS・会員リストがあります。
その他、手術の関連科として
麻酔科学会認定医<専門医<指導医
ベンクリニックでの管理麻酔は、指導医以上の資格のある信頼できる麻酔医にお願いしています。
皆さんが治療を受けている医師の専門科目とレベルをチェックすることは、思わぬトラブルを避けるためにも大切なことだと思います。
Posted by 管理者 at 14時10分 パーマリンク
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